化学製品の生産方法は多岐にわたりますが、多くのプロセスで、微量の水分や不純物を効率よく高度に除去・回収することが求められており、特異な吸着特性を持つ当社のモレキュラーシーブが主に下記の用途で使用されています。
これらのうちいくつかご紹介します。
ナフサ分解ガスの乾燥と精製
石油化学産業の基幹であるエチレンセンターでは、ナフサ(粗製ガソリン)等の原料に、水蒸気の存在下非常に高い温度をかけて熱分解反応を起こし(スチームクラッキング)、さらに水添反応・分離・精製などの工程を経て、多くの化学製品の基礎原料となるエチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエンなどの石油化学基礎製品を産み出しています。
ナフサ分解ガスには水分が含まれていますが、低温工程では氷結して配管や機器の閉塞を引き起こし、また反応工程では触媒毒となって触媒性能を低下させる懸念があります。これらのトラブルを予防するための乾燥剤には次のような性能が要求されます。
・ 高い水分吸着能を有し、高度の乾燥(<1ppm)が可能であること。
・ 反応性の高いエチレンなどに対しても、触媒作用を及ぼさず、重合等の副反応を起こさないこと。
・ 圧力損失が低いこと。
・ 再生のための熱サイクルや圧力サイクルを経ても劣化しにくく、吸着性能を長期にわたり維持できること。
・ 機械的強度が高く、使用に伴う割れや粉化が少ないこと。
アンモニア、水素、二酸化炭素、塩素をはじめとするガスの乾燥と精製
当社のモレキュラーシーブは上記いずれの性能も満たし、多くのエチレンセンターにご採用いただいており、下記の性能が高く評価されています。
・ エチレン誘導品のプロセスで触媒毒になる可能性のある微量アンモニアの除去が可能であること。
・ 分解原料の多様化に伴い、微量ながらもプロセス中に持ち込まれ、機器の破損や触媒毒の原因となりうる水銀を除去できること。
特に当社水銀吸着剤HgSivTM は、もともとUOP社が天然ガスプロセス用に開発したものですが、ナフサ等分解原料の多様化指向のニーズにマッチし、日本国内の大多数のエチレンセンターにご採用いただいています。
コモノマーの精製
次世代吸着剤としてAZ-300をご紹介します。
モレキュラーシーブだけでは複雑なプロセルになりがちだったオレフィンの精製分野で画期的な吸着剤 AZ-300がUOP社によって開発されました。手っ取り早く言えばモレキュラシーブと活性アルミナ両方の性能を有した吸着剤です。
代表的な用途例としてOlefins Conversion Technology (OCT) があります。
OCTプロセスは触媒を使ってエチレン、2-ブテンからプロピレンを製造するプロセスです。その触媒保護の為AZ-300は流体中に存在する硫黄化合物、アルコール類など様々な不純物を効率良く吸着してくれます。